しかし、自然状態ではだれもが自分の生命を守るために好き勝手なことをしており、それ故に平和が訪れない。そこには、だれもが自分の身を守ろうとするが故に、全員の身が危うくなっているという矛盾がある。
ならばどうすればよいか? この矛盾をどう解消すればよいか? ホッブズの議論は簡単だ。自分の身を守るために全員が好き勝手にしているのを、全員で止めればいい。自然が人間に与えた「何でもできるし、何をしてもよい」権利、すなわち「自然権」を放棄し、法の支配を打ち立てればよい(これを第二の自然法則と言う)。
こうして、全員で一つの国家を形成し、一つの権威に従うという社会契約の必然性が導き出される。ホッブズによれば、社会契約は、戦争状態たる自然状態を考察するなら必ずや導き出される必然的な行為なのである。
國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(新潮社、2021年)