社会学にとどまらず、人類学や経営学、政治学、アートなど幅広い分野で応用されている「アクターネットワーク理論」(以下、ANT)というものがある。フランスの社会学者であるブリュノ・ラトゥールが代表的な提唱者だ。
ANTは人びとの集まりが「社会」を構成するのではなく、非人間(生物、無生物、 人工物、技術などあらゆる要素)を含む異種多様なアクターの連関が「社会的なもの」を組み立てていると考える。
ラトゥールは社会を基本的に複数の人間の集まりと捉える「社会的なものの社会学」を批判し、非人間を二次的なものと位置づけることのない「連関の社会学」を打ち立てた。
要するに、行為する主体としての人間だけではなく、人間以外のさまざまな要素が果たすネットワークをたどり、その結果として社会を見る必要を訴えたのである。人間/非人間にかかわらず、アクターは他のアクターとの連関を通じてエージェンシー(行為や作用を生み出す力行為主体性)を発揮する。ANTはこのように近代の人間中心主義からの脱却を前提にして「社会」を捉える理論だといえるだろう。
たとえば、ANTからすれば、子供が遊具を主体的に用いて遊んでいるとは捉えない。子供の遊びを構成するのは、人間の行為だけではなく、遊びの空間を構成するあらゆる要素遊具、大地、自然、天気、技術、素材などのアクターである。
北村匡平『遊びと利他』(集英社、2024年)